ボウイ

そういえば僕が初めてボウイを聴いたのは友人の部屋だった。

その友人が僕に作曲をするように説得した人なんだ。

高校生の時なのだが、授業が終わると僕を廊下で待っていて

曲を作れ作れと説得しに来る。

僕はといえば、コピーバンドで楽しんでるので興味ないと答える日々。

そうすると友人はいつも自宅に僕を無理やり連れて行き

色んな音楽を爆音で聴かせる。

キングクリムゾンなんかもそこで聴いた。

かなりジャンルの幅がすごかったと思う。

jazzとかblues、クラシックも混じっていた。

ロバートジョンソンも彼に教えてもらった。

BBキングとかはレコード持ってたけど知らなかったのだ。

彼の面白いところは、かける曲が決まってから再生ボタンを押すまでが長い。

ラジオのDJどころではない。

一曲聴かせるのに、かなりのストーリーを熱弁する。

話を聞いていて、おっそろそろクライマックスだ、再生ボタンに手が…。

ってそこからまた思い出した話が始まったりするのだ。

その日はロックの日だった。忘れもしない。

イーグルスのホテルカリフォルニアとかドゥービーブラザーズとか

日本の70年代のロックなんかを聴かせてくれていた。

イーグルスの時はというと。

色んな話や伝説をさんざん話した後

「1970年代、アメリカの西海岸の若者はヒッピー文化とラブアンドピースを

追求していたんだ…、まとちゃん…。」

ガチャッ! 再生。

みたいな状況。

身振り手振りですごいから笑いをこらえるのが必死だった。

でもすごく今思えば感謝している。

作曲も始めたし。

その日の最後にボウイを聴いたわけだ。

「まぁ、今はボウイなんか聴いてて流行ってるけど、流行ってるからって

流行じゃない流行ってあるんだ。時代が呼んだグループってあるんだ。」

といった趣旨の熱弁。

僕はボウイを知らなかった。

友人は動揺するほど驚いていた。

「まとちゃん、それはアカン!一回も無いのか?耳にしたことくらいあるだろう!」

と言ってきたが僕は首をひねった。

友人の部屋は全く勉強してませんという部屋で、

机の上はカセットテープやレコードが積み上がっていて

周りは本とかの塔ができている。

なんだなんだと言いながらボウイのテープをあせって探している。

「いいよ、いいよ、今日は帰るわ。」と立ち上がったときにテープが

出てきた。

帰る、いや聴け、いやいや等と押し問答の末に

聴いたのが「DREAMIN’」だった。

ロックはまず10代のものだ。まずそこで引っかからないと

大人のロックなどないと思う。

ボウイが活躍していたその時代に17歳であったことは

またとない幸運だったろうと思う。

ボウイの音楽が吸って吐いている空気が僕らに近いのだ。

時代の空気だ。歌詞も含めて。

エモーショナルなボーカルのそしてギターのメロディ。

それを前面に立体的に押し出してくるビートに圧倒されてしまった。

洋楽のロックもいいが、歌詞と時代の空気で押してくるボウイは

間違いなく僕たちのロックだろう。